一般社団法人全国がん患者団体連合会(全がん連)では、「がん対策基本法改正案」の早期成立を要望してまいりましたところ、11月15日の参議院厚生労働委員会において、与野党の全会派一致による委員長提案として上程され可決されるとともに、11月16日の参議院本会議において、参議院厚生労働委員会による提案として上程され、出席総数234名、賛成234、反対0、全会一致により可決されました。当日の参議院厚生労働委員会並びに参議院本会議は、全がん連より天野慎介理事長が傍聴いたしました。

参議院厚生労働委員会(2016年11月15日)

「がん対策基本法改正案」は参議院先議により提案されており、この後は衆議院で審議されます。超党派議連「国会がん患者と家族の会」や参議院厚生労働委員会をはじめ、「がん対策基本法改正案」の可決に向けてご尽力をいただいた与野党の参議院議員の皆さま、全国のがん患者団体やがん患者、ご家族の皆さま、そしてご理解とご支援をいただいた多くの皆さまに改めて感謝申し上げますとともに、衆議院での審議並びに今国会での成立に向けて皆さまのご理解とご支援を賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

 第192回国会(臨時会)参議院議案情報(参議院ホームページ)

 がん対策基本法の一部を改正する法律案「議案情報」(参議院ホームページ)

icon_pdf_01 がん対策基本法の一部を改正する法律案「議案要旨」(PDF)(参議院ホームページ)

icon_pdf_01 がん対策基本法の一部を改正する法律案「提出法律案」(PDF)(参議院ホームページ)

「がん対策基本法改正案」羽生田俊・参議院厚生労働委員会委員長による趣旨説明(2016年11月15日参議院厚生労働委員会)(参議院インターネット審議中継)

icon_movie_02 「がん対策基本法改正案」羽生田俊・参議院厚生労働委員会委員長による趣旨説明(2016年11月15日参議院厚生労働委員会)(参議院インターネット審議中継)

「がん対策基本法改正案」羽生田俊・参議院厚生労働委員会委員長による趣旨説明

社会保障及び労働問題等に関する調査のうち、がん対策基本法の一部を改正する法律案に関する件を議題といたします。本件につきまして、理事会において協議いたしました結果、お手元に配布いたしております草案を提出することで意見が一致しました。まず、草案の趣旨及び主な内容についてご説明申し上げます。

がんは、我が国で昭和56年より死因の第1位であり、平成26年には年間約37万人ががんで亡くなっており、生涯のうちに国民の2人に1人が、がんにかかると推計されております。このように、がんは国民の生命と健康にとって重大な問題となっています。平成18年に制定された現行のがん対策基本法には、がんの予防及び早期発見の推進、がん医療の均てん化の促進、研究の推進等を基本的施策としており、この基本法に基づき、国、地方公共団体、がん患者を含めた国民などが一体となって、がん対策が進められてきました。

しかし、がんの早期発見のためのがん検診をより効果的に活用することや、がん患者の療養生活の質の維持向上などについて、一層の取組が求められています。また、がん医療の進歩とともに、わが国の全がんの5年相対生存率は62.1%となっており、がん患者中には長期生存し、社会で活躍している方々が多くみられます。このような中で、がん患者やがんの経験者が、適切ながん医療のみならず、福祉、雇用、教育などについて必要な支援を受けられるようにすることが必要となっています。さらに、がん患者の社会生活上の不安を和らげるためには、国や地方公共団体が中心となって、がん患者を支援することにとどまらず、社会全体でがん患者を支えていくことも求められています。また、本年1月にはがん登録推進法が施行されるなど、がん対策基本法制定時から状況が変化してきています。

本案はこのような状況に鑑み、がん対策基本法を改正し、がん対策を総合的かつ計画的に推進していこうとするものであります。

次に、本案の主な内容についてご説明申し上げます。

第1に、目的規定において、がん対策においてがん患者がその状況に応じて必要な支援を、総合的に受けられるようにすることが課題となっていることに鑑み、がん対策を推進する旨を明記することとしております。

第2に、基本理念として、がん患者が尊厳を保持しつつ、安心して暮らすことのできる社会の構築を目指し、がん患者がその置かれている状況に応じ、適切ながん医療のみならず、福祉的支援、教育的支援、その他の必要な支援を受けることができるようにするとともに、がん患者に関する国民の理解が深められ、がん患者が円滑な社会生活を営むことができる社会環境の整備が図られること等を明記することとしております。

第3に、がん患者の雇用の継続等に関する事業主の責務について、規定することとしております。

第4に、がんの予防及び早期発見に係る施策として、がんの原因となるおそれのある感染症等に関する啓発、がん検診によりがんの疑いがあると判定された者等が、必要な診療を受けることの促進等について規定することとしております。

第5に、緩和ケアのうち医療として提供されるものに携わる専門的な知識、及び技能を有する医療従事者の育成を図るための施策を規定することとしております。

第6に、がん患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策として、がん患者の状況に応じて、緩和ケアが診断のときから適切に提供されるようにすること等を明記するとともに、がん患者の家族の生活の質の維持向上のために必要な施策をも講ずるものとしております。

第7に、がんの罹患率及びがんによる死亡率の低下に資する事項、並びにがん患者の療養生活の質の維持向上に資する事項についての研究の促進等の施策を講ずるに当たっては、罹患している者の少ないがん及び治癒が特に困難であるがんに係る研究の促進について、必要な配慮がなされるものとしております。

第8に、がん患者の雇用の継続、小児がんの患者、その他のがん患者における学習と治療との両立、学校教育及び社会教育におけるがんに関する教育の推進などについて規定することとしております。

なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。以上が、この法律案の草案の趣旨及び内容であります。何卒、委員各位のご賛同をお願い申し上げます。