2025年12月24日、高額療養費見直しの具体的な金額が明らかとなったことを受け、全国がん患者団体連合会(全がん連)と日本難病・疾病団体協議会(JPA)は「高額療養費制度の見直しに関する共同声明」を公開、上野賢一郎厚生労働大臣と間隆一郎厚生労働省保険局長に送付提出したことをお知らせします。

2025年12月24日
厚生労働大臣 上野 賢一郎 様
厚生労働省保険局長 間 隆一郎 様
一般社団法人全国がん患者団体連合会(全がん連)
一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)
高額療養費制度の見直しに関する共同声明
2025年3月に石破茂首相は、全国がん患者団体連合会(全がん連)と日本難病・疾病団体協議会(JPA)と面会し、高額療養費制度の見直しについて「見直し全体について、その実施を見合わせるという決断をいたしました」「本年秋までに、改めて方針を検討し、決定することといたします」との声明を発表し、5月には厚生労働省社会保障審議会医療保険部会に「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」が設けられました。専門委員会では患者団体も委員として参画する中、患者団体や保険者、医療者や有識者の参考人に対してヒアリングを行いつつ、8回にわたり高額療養費制度の見直しについて検討を行い、12月15日に開催された専門委員会で「高額療養費制度の見直しの基本的な考え方」が取りまとめられました。
「高額療養費制度の見直しの基本的な考え方」の中では、長期にわたり継続して治療を受ける患者に配慮し、「多数回該当」は現行水準を維持すること、長期療養が必要であるにもかかわらず多数回該当から外れてしまう患者に配慮し、新たに「年間上限」を設けること、既に現行制度においても所得の低い区分エ・区分オの患者を中心におおむね10-40%の患者が、世界保健機関(WHO)が定義する「破滅的医療支出」水準(総支出から基本的な生活費を除いた「医療費支払い能力」に対して、医療費支出が4割超)となっている可能性がある現状に配慮し、年収200万円未満の患者の「多数回該当」を引き下げ、「外来特例」の一部区分を据え置きとすること、などについては、患者委員をはじめとする専門委員会からの意見、並びに与野党の超党派議連「高額療養費制度と社会保障を考える議員連盟」からの意見を反映していただいたことに、謝意を表します。
一方で、「高額療養費制度の見直しの基本的な考え方」取りまとめに際しては、専門委員会に対して高額療養費制度の見直しに伴う具体的な金額は示されず、「近年の医療費の伸び等に対応した限度額の見直し」「所得区分の細分化」などの方針が示されるにとどまったため、患者委員からは「仮に限度額が引き上げとなった場合でも、相当程度抑制的な金額の引き上げとすること」「性急な変更は、生活破綻のリスクにつながる可能性があるので、段階的かつ丁寧な見直しが必要」などの意見が繰り返し述べられました。その後、年末の予算編成の中で社会保障改革に伴う予算額が決まり、高額療養費制度の見直しに伴う具体的な金額が明らかとなりました。
月毎の限度額については、2024年12月に示された「昨年案」の引き上げ金額と比べれば、2025年12月に示された「今年案」では概ね「半額」程度の引き上げとなっており、一定の抑制が行われていますが、そもそも「昨年案」の金額は過重な負担増でした。例えば、70歳未満の年収約650万円~770万円の区分では、現行制度では月額80,100円(+[医療費-267,000円]×1%)のところ、「今年案」では110,400円と37%増(「昨年案」では138,600円と73%増)となっています。個々の患者の家計の状況により負担感は異なりますが、多数回該当の据え置きと年間上限の新設により、長期にわたり継続して治療を受ける患者の負担は年間で軽減されている一方で、月毎の限度額については十分に抑制されていないと言わざるを得ません。
高額療養費制度の次世代への継承を確かなものとするために、社会保障制度全体の改革を含めた高額療養費制度の一定の見直しが必要であることは理解いたしますが、専門委員会でも複数の委員から、高額療養費の限度額はむしろ引き下げをすべきではないかという意見も出ていたことを踏まえ、以下の要望を提出いたします。
●多数回該当の据え置きと年間上限の新設により、長期にわたり継続して治療を受ける患者の年間での負担軽減を着実に実行する一方で、月毎の限度額については十分に抑制されていないため、仮に月毎の限度額を引き上げる場合でも、治療断念や生活破綻につながることがないように更なる抑制を検討すること。
●特に、70歳未満の月毎の限度額について、いわゆる現役世代が既に高い社会保険料を負担しているにも関わらず、「応能負担」に基づいて引き上げ金額が大きくなっているため、特段の配慮を行うこと。
●高額療養費制度は我が国の公的保険医療制度の根幹を成し、「大きなリスク」に備える重要なセーフティネットであることから、医療費節減に資する他の代替手段について、優先かつ十分な検討を引き続き行うこと。