【みなさまへ】
新型コロナウイルス感染症の拡がりに伴い、がん患者や家族の皆さまから多くの声が寄せられています。当初は、「自分が感染してしまうのではないか」「外来に行って大丈夫なのか」などの不安の声を多くいただきましたが、4月中旬以降は治療や検査、経過観察が延期となったという声も増えています。地域や医療機関によっては、がん医療を守ろうという医療関係者の懸命な努力にもかかわらず、実際に診療制限せざるを得ないという厳しい状況になっています。
私自身も、血液がんである悪性リンパ腫の経験者であり、加えて以前のがん治療の際には、がん治療に伴う重篤な合併症の一つである間質性肺炎で長期入院したこともあるため、「ハイリスクな基礎疾患を有する者」の一人として、感染症の拡がりは私個人にとっても極めて身近な脅威です。特に、現在治療中や治療直後のがん患者や家族の皆さまにとっては、大きな不安を感じられている方も多くいらっしゃると思います。
新型コロナウイルス感染症については、未だわからないことも多く、全ての不安に対して回答が得られるわけではありません。しかし、「正しく知ること」そして「正しく恐れること」である程度軽減できる不安もあります。すでに公的機関や医療関係者、多くの支援団体から信頼できる情報発信が開始されていることから、これらを網羅的にご紹介するとともに、がん医療や支援に関わる医療関係者の皆さまのご協力をいただき、オンラインセミナーでの情報提供を開始しました。
その中では例えば、海外でのデータをもとに「治療中や治療直後のがん患者は、基礎疾患を有さない健常な方と比較をすれば、重症化のリスクが高い」可能性があるとされている一方で、個々のがん患者さんの病態や受けた治療、年齢やその他の疾患の有無でも異なり、全てのがん患者さんが一律にリスクが高いというわけではない、との指摘もあります。「がんを含む基礎疾患を有する人を守ること」がとても重要ですが、個々の患者さんによってリスクが違うということがありますので、一人で治療などに関して判断してしまうのではなく、「正しく知り、正しく恐れること」が必要です。
また、感染症対策の一つとしてface to
faceでの繋がりが減少しており、がん患者団体の活動では、集団での講演会や交流会、がんサロンなどの開催が困難となっていることから、「相談できる場所が無い」との声もいただいています。これに対しては、従来よりある電話相談での窓口に加えて、Web会議システムやSNSを用いたオンラインでの交流の場も拡がっています。「つながりを保つこと」が力になることから、全国がん患者団体連合会としても、こういったface to face以外の場に関する情報提供を行うとともに 、こういった場作りの支援を行ってまいります。
しかし、個々のがん患者や家族の皆さまが努力をしても、感染症の脅威を完全に取り除くことは出来ません。厳しい医療環境のもとでこの瞬間も尽力されている医療関係者の方々を思うとき、医療関係者の方々の命を守れないことは医療崩壊に繋がり、新型コロナウイルス感染症はもちろんのこと、がんやその他様々な命に関わる疾病の治療も困難となることを意味します。そしてこれは、皆さんが明日や近い将来、がんや命に関わる疾患となったときに、救える命が救えなくなる可能性があることを一人ひとりの皆さまに知っていただき、外出の自粛など身の回りでできることを多くの人たちに実行していただきたいと強く願います。
最後に、がん患者の皆さまへ。皆さまはすでにがんという命に関わる病を経験し、向き合われています。これに加えて感染症の脅威と向き合わなければならないのかと思われている方々もいらっしゃるかもしれません。しかし、すでにがんという命に関わる病を経験している皆さまは、病との向き合い方、乗り越え方をすでに体得されているともいえます。今この瞬間も多くのがん患者という仲間が同じく不安を感じ、そして乗り越えようとしています。決して一人ではないということをお伝えします。ともに頑張りましょう。
理事長 天野 慎介
【リンク集】
新型コロナウイルスに関する情報です。
随時更新していきます。
■海外がん医療情報リファレンス
新型コロナウイルス情報リンク集
国内外のコロナウイルスに関する情報をまとめてあります。
■国立がん研究センターがん情報サービス
がん患者や家族、周りの人へ： 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に際して
相談支援センターの情報などがまとめてあります。
■愛知県がんセンター
COVID-19についての各種情報（リンク集を含む）
全国がん患者団体連合会も「Ｑ＆Ａ」作成に協力させていただきました。
