2015年9月17日に厚生労働省第53回がん対策推進協議会が開催され、全国がん患者団体連合会からの要望書「がん対策基本法の改正に関する要望書」「がん対策加速化プランに関する要望書」が協議会資料として提出されましたので、ご報告いたします。

厚生労働省第53回がん対策推進協議会資料

 

「がん対策基本法の改正に関する要望書」(厚生労働省がん対策推進協議会・全国がん患者団体連合会提出資料)

平成27年6月16日

国会がん患者と家族の会
並びに国会議員の皆様

一般社団法人全国がん患者団体連合会
理事長 天野 慎介

がん対策基本法の改正に関する要望書

がん対策基本法の改正に関して、全国がん患者団体連合会の加盟団体からの意見を取りまとめ、以下の要望を提出いたします。

(従来のがん対策基本法におけるがん対策の推進に関して)

1.「救える命を救う」「避けられるがんを防ぐ」ための対策が不足しています
第2条「居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切ながんに係る医療を受けることができるようにすること」とありますが、がん診療連携拠点病院での標準治療実施率等に主要ながんでも未だ格差があり、喫煙対策などの予防やがん検診も不十分です。

2.緩和ケアと在宅医療の推進が不足しています
第16条「疼痛等の緩和を目的とする医療が早期から適切に行われるようにすること、居宅においてがん患者に対しがん医療を提供するための連携協力体制を確保」とありますが、患者と家族の苦痛は未だ十分に軽減されず、介護保険や障害年金との連携も不十分です。

3.がん対策を総合的に推進するための制度が不足しています
第19条でがん対策推進協議会の設置が定められていますが、がん対策推進基本計画の策定で「意見を聴く」(第9条)とあるのみであり、がん対策全般への患者参画、患者や家族、地域の実情と声を継続的に調査する仕組みがなく、患者や患者団体の責務も不十分です。

(今後のがん対策基本法におけるがん対策の推進に関して)

1.小児がん・希少がん・難治がんの対策が新たに必要です
若年がんを含む小児がん、希少がん、難治がん対策の充実は基本法になく、小児・若年がん経験者の長期支援体制、治療成績向上のための集約化とがん登録の利活用、未承認薬の早期承認の促進やがん基金の創設による研究や臨床試験の推進などの制度が必要です。

2.がん患者の就労を含めた社会的な問題への支援が新たに必要です
都道府県がん条例で事業者の責務に「従業員とその家族が安心して治療できる環境の整備」とありますが法的根拠に乏しく、患者の働き方に応じた就業希望や雇用能力開発の支援と合理的配慮など、患者と家族の自立に向けた包括的支援を進める必要があります。

3.がん患者と家族の権利と尊厳を守るための対策が新たに必要です
がん対策推進基本計画で「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」とありますが法的根拠に乏しく、偏見を除くための啓発やがん教育、患者や家族の疾病や遺伝子情報に係る差別の禁止、患者の意思決定やセカンドオピニオンの権利を保障する必要があります。

以上

がん対策基本法の改正に関する要望書
賛同団体一覧(一般社団法人全国がん患者団体連合会加盟団体)(団体名50音順)

特定非営利活動法人 AWAがん対策募金 (理事長 勢井啓介)
一般社団法人 CSRプロジェクト (代表理事 桜井なおみ)
特定非営利活動法人 HOPEプロジェクト (理事長 桜井なおみ)
特定非営利活動法人 愛媛がんサポートおれんじの会 (理事長 松本陽子)
特定非営利活動法人 がんサポートかごしま (理事長 三好綾)
がん体験者の会とま~れ (代表 佐々木佐久子)
特定非営利活動法人 がんと共に生きる会 (理事長 佐藤愛子)
特定非営利活動法人 がんフォーラム山梨 (理事長 若尾直子)
がんを考える「ひいらぎの会」 (代表世話人 鈴木牧子)
特定非営利活動法人 希望の会 (理事長 轟哲也)
特定非営利活動法人 キャンサーサポート (代表理事 宮部治恵)
一般社団法人 グループ・ネクサス・ジャパン (理事長 天野慎介)
一般社団法人 高知がん患者支援推進協議会 (理事長 安岡佑莉子)
特定非営利活動法人 支えあう会「α」 (理事長 五十嵐昭子)
特定非営利活動法人 周南いのちを考える会 (代表 前川育)
精巣腫瘍患者友の会J-TAG (共同代表 改發 厚・古谷 浩)
奈良がんピアサポートなぎの会 (会長 松浦博子)
奈良県のホスピスとがん医療をすすめる会 (会長 浦嶋偉晃)
特定非営利活動法人 乳がん患者友の会きらら (理事長 中川けい)
特定非営利活動法人 ねむの樹 (理事長 金井弘子)
特定非営利活動法人 パンキャンジャパン (理事長 眞島喜幸)
特定非営利活動法人 ブーゲンビリア (理事長 内田絵子)
特定非営利活動法人 ミーネット (理事長 花井美紀)
ゆうかぎの会(離島におけるがん患者支援を考える会) (会長 真栄里隆代)

(2015年6月16日現在)

 

「がん対策加速化プランに関する要望書」(厚生労働省がん対策推進協議会・全国がん患者団体連合会提出資料)

平成27年9月15日

厚生労働大臣 塩崎恭久様
厚生労働省がん対策推進協議会長 門田守人様

一般社団法人全国がん患者団体連合会
理事長 天野 慎介

「がん対策加速化プラン」に関する要望書

平成27年6月1日に開催された厚生労働省「がんサミット」において、安倍晋三内閣総理大臣からの指示に基づき「がん対策加速化プラン」が策定されることが示され、塩崎恭久厚生労働大臣より同プランにおける「予防(予防の強化)」「治療・研究(難治性がん等の研究)」「共生(地域医療)」の3本の柱が示されました。

6月19日に公開された国のがん対策推進基本計画に対する中間評価報告書では、基本計画に示された全体目標「75歳未満年齢調整死亡率の20%減少」の達成が難しいとの予測が出ており、同プランの策定にあたっては、基本計画の推進に資する検証と改善が求められるとともに、次期基本計画や今後のがん対策を見据えた取り組みが求められています。

全国がん患者団体連合会では加盟団体からの意見を取りまとめ、「避けられるがんを防ぐこと」「救える命を救うこと」そして「がんになっても安心して暮らせる社会となること」を求め、患者や家族の立場から以下の要望を提出いたします。

(がん対策加速化プランにおける「予防」について)

1. 従来より行われてきたがん検診受診率向上のための施策について、その効果について検証と改善を行うとともに、必要に応じて大きな転換を図ること
がん検診受診率は上昇傾向にあるものの、未だ低い数値にとどまっています。検診の啓発にとどまらず、自治体での検診クーポン発行やいわゆるコール・リコールについて、受診対象者の視点に基づいた検証と改善を行うとともに、職域やかかりつけ医での受診勧奨、検診受診者への公的医療保険におけるインセンティブの付与などを検討してください。

2. がん検診の推進にあたって、科学的根拠に基づいた対策を実施するとともに、国はその実施について自治体に対して責任をもって指導を行うこと
がん検診受診のための指針に基づかないがん検診が、一部自治体で行われています。利益(死亡率減少効果)と不利益に関して科学的根拠に基づいた検討を継続して行い、胃内視鏡検査など利益が認められる検診は対策型検診に含めるとともに、検診精度の向上や利益が不十分と考えられる検診の中止については、国が責任をもって指導を行ってください。

3. がん予防の推進にあたって、科学的根拠に基づいた対策を実施するとともに、喫煙率の減少など根拠が明らかな対策については、国が責任をもって対策を実施すること
喫煙や受動喫煙は、がんを含む様々な疾病の原因や発症リスクです。基本計画や「たばこ規制枠組条約」にある一連のたばこ対策を、国と自治体は責任をもって実施してください。また、利益と不利益に関する科学的根拠に基づき、感染に起因するがんの対策、遺伝性・家族性腫瘍や特定の遺伝子変異陽性者への発症予防と社会的支援を行ってください。

(がん対策加速化プランにおける「治療・研究」について)

4. がん登録やその他のデータベースを活用して、科学的根拠に基づいた標準治療や支持療法の実施割合を高めるとともに、がん医療に関する情報公開と可視化を進めること
中間評価報告書では、主要ながんでも標準治療や支持療法の実施割合が高くありません。がん登録やQI(臨床指標)など国、学会等が有するデータを活用し、国と学会等は共同して標準的治療の実施割合を高める施策を行うとともに、地域や医療機関における患者数や治療成績などを明らかにし、医療の向上と患者が必要とする情報の公開を進めてください。

5. 身体的・精神的な痛みを軽減するための緩和ケアや支持療法を、全てのがん患者が受けられるようにするとともに、患者の意思決定を支えるサポートを充実させること
中間評価報告書では、4割の患者が苦痛やつらさを適切に緩和されていません。苦痛のスクリーニング、精神的・全人的な痛みに対応する専門職やピアサポーターの配置、がん治療や緩和ケアに関わる学会間の連携を進めてください。また、セカンドオピニオンの体制整備、高齢者や認知症、看取り期の意思決定支援、グリーフケアを進めてください。

6. 小児がん、希少がん、難治がんを中心に、診療体制の構築と革新的な医薬品等の開発を推進するとともに、がん研究を推進するための基盤整備と患者参画を進めること
小児がん対策の中央機関や拠点病院と同様に、希少がんや難治がんも中央機関と診療ネットワークを構築してください。また、がん研究予算の重点的な確保、小児・希少・難治がんの医薬品開発や早期承認へのインセンティブの付与、病理医やCRC(臨床研究コーディネーター)等の人材育成、がん研究や臨床試験の情報公開と患者参画を進めてください。

(がん対策加速化プランにおける「共生」について)

7. 拠点病院を含む入院医療機関は、地域のかかりつけ医や在宅緩和ケアを提供できる診療所との連携を促進し、患者と家族の立場にたった情報提供と相談支援を行うこと
拠点病院から地域の医療機関、かかりつけ医や在宅医療への連携、クリティカルパスの整備が不十分であり、地域の医療体制にも格差があることから、患者はしばしば不本意な転院や療養を強いられています。患者を含む地域の関係者が顔の見える形で協議する場を設け、マップの公開等の情報提供、患者や家族と共に考える相談体制を整備してください。

8. がん患者の生活を支える諸制度について、患者と家族への情報提供や利用支援を行うとともに、患者と家族が利用しやすい制度変更を検討すること
がん患者の生活を支える諸制度があるにもかかわらず、多くの患者や家族がその存在を知らず、申請にも時間と負担を強いられています。患者と家族への情報提供と、医療機関やその他相談窓口等での支援を行うとともに、障害年金や介護保険のがん患者への迅速承認、傷病手当金の分割取得化、障害者手帳の症状に応じた適応拡大を検討してください。

9. 2人に1人ががんに罹患する日本において、「がんになっても安心して暮らせる社会」を構築するために、社会全体が関わる形でがん対策を推進すること
がん対策は社会のマルチステークホルダーの関与が必要です。患者体験調査の継続的な実施と公開、医療者と患者、教育や企業関係者が協働する学校や職場でのがん教育、医療機関や行政だけでなく企業や経済団体も関わる就労支援、企業や社会から支援を募るがん対策基金の創設などの諸施策を通じ、国民全体を巻き込んだがん対策を推進してください。

以上

「がん対策加速化プラン」に関する要望書
賛同団体一覧(一般社団法人全国がん患者団体連合会加盟団体)(団体名50 音順)

特定非営利活動法人 AWAがん対策募金 (理事長 勢井 啓介)
一般社団法人 CSRプロジェクト (代表理事 桜井 なおみ)
特定非営利活動法人 HOPEプロジェクト (理事長 桜井 なおみ)
特定非営利活動法人 いきいき和歌山がんサポート (理事長 谷野 裕一)
特定非営利活動法人 愛媛がんサポートおれんじの会 (理事長 松本 陽子)
神奈川県立がんセンター患者会「コスモス」 (代表 緒方 真子)
特定非営利活動法人 がんサポートかごしま (理事長 三好 綾)
がん体験者の会とま~れ (代表 佐々木 佐久子)
特定非営利活動法人 がんと共に生きる会 (理事長 佐藤 愛子)
特定非営利活動法人 がんフォーラム山梨 (理事長 若尾 直子)
がんを考える「ひいらぎの会」 (代表世話人 鈴木 牧子)
特定非営利活動法人 希望の会 (理事長 轟 哲也)
特定非営利活動法人 キャンサーサポート (代表理事 宮部 治恵)
一般社団法人 グループ・ネクサス・ジャパン (理事長 天野 慎介)
一般社団法人 高知がん患者支援推進協議会 (理事長 安岡 佑莉子)
特定非営利活動法人 支えあう会「α」 (理事長 五十嵐 昭子)
特定非営利活動法人 周南いのちを考える会 (代表 前川 育)
精巣腫瘍患者友の会J-TAG (共同代表 改發 厚・古谷 浩)
奈良がんピアサポートなぎの会 (会長 松浦 博子)
奈良県のホスピスとがん医療をすすめる会 (会長 浦嶋 偉晃)
特定非営利活動法人 乳がん患者友の会きらら (理事長 中川 けい)
特定非営利活動法人 ねむの樹 (理事長 金井 弘子)
特定非営利活動法人 パンキャンジャパン (理事長 眞島 喜幸)
特定非営利活動法人 ブーゲンビリア (理事長 内田 絵子)
特定非営利活動法人 ミーネット 理事長 花井 美紀
ゆうかぎの会(離島におけるがん患者支援を考える会) (会長 真栄里 隆代)

(2015年9月15日現在)