与野党の超党派「適切な遺伝医療を進めるための社会的環境の整備を目指す議員連盟」による「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律案」については本日、6月9日の参議院本会議にて賛成多数で可決いただき、成立しました。法案成立に向けてご尽力いただいた超党派議連や国会議員の皆様、要望にお力添えいただいた患者団体や医療関係団体の皆様に心より感謝申し上げます。


同法案については、2014年に超党派の国会議員の皆さまにより設立された「遺伝医療・ビジネスを取りまく諸課題を考える勉強会」での検討に始まり、勉強会は2016年に超党派「適切な遺伝医療を進めるための社会的環境の整備を目指す議員連盟」となり、ゲノム関連の法律を検討いただいてきました。この間、全国がん患者団体連合会やゲノム医療当事者団体連合会などの患者団体では、法律の早期成立を国会議員の皆さまに要望してまいりました。


2018年12月には、全国がん患者団体連合会と日本難病疾病団体協議会は共同で、当時の大口善徳厚生労働副大臣に法律の早期成立を求める要望書を手交し、2022年4月には日本医学会と日本医師会から「遺伝情報・ゲノム情報による不当な差別や社会的不利益の防止」についての共同声明が公表されました。2022年11月には、武藤香織教授(東京大学医科学研究所)の取りまとめにより、患者団体や医療関係団体あわせて185団体より、「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律」早期成立に向けた要望書が提出され、現在の賛同団体は254団体となります。


日本人に適したゲノム医療の研究開発が推進され、提供体制が整備されれば、がんや難病をはじめ広く国民に正確な診断法や治療法が普及すると期待されます。一方で、生まれながらにして個人が有する全遺伝情報は、本人およびその家族についても将来の健康状態や障害を予測し得る特性があることから、不当な差別の防止など生命倫理の立場から適切な配慮が必須です。


米国ではGINA法(遺伝情報差別禁止法)が2008年に成立し、カナダや欧州でも同様の法律があるところですが、国内では個人情報保護法による対応のみに留まっており、現時点では不当な差別や社会的不利益の防止についての法規制が存在しません。今回の法案成立は、その貴重な一歩となることは明らかですが、一方で国会の委員会審議では、不当な差別防止の実効性を担保することについて、現状では各省庁による制度や対応が不十分である点も明らかとなりました。


法案成立にご尽力いただいた皆様に、重ねて感謝申し上げますとともに、法律の実効性を担保するために引き続き皆様のご指導とお力添えを賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。