「小児とAYA世代のがん患者の妊孕性温存への支援を求める要望書」三原じゅん子・厚生労働副大臣への手交
三原じゅん子・厚生労働副大臣への要望書手交

一般社団法人全国がん患者団体連合会、小児がん・AYAがん(思春期・若年がん)患者団体有志では「小児とAYA世代のがん患者の妊孕性温存への支援を求める要望書」を令和2年11月25日付で厚生労働大臣、厚生労働副大臣、厚生労働大臣政務官宛に提出するとともに、三原じゅん子・厚生労働副大臣に手交いたしました。副大臣には時折涙を流されながら、熱心に一人一人の経験や声に耳を傾けていただくとともに、政策実現に向けた強い決意をお話いただきました。副大臣におかれましては政務ご多忙の折に、誠にありがとうございました。

小児とAYA世代のがん患者の妊孕性温存への支援を求める要望書

令和2年11月25日

厚生労働大臣 田村 憲久 様
厚生労働副大臣 山本 博司 様
厚生労働副大臣 三原 じゅん子 様
厚生労働大臣政務官 大隈 和英 様
厚生労働大臣政務官 こやり 隆史 様

一般社団法人全国がん患者団体連合会(全がん連)
小児がん患者団体有志
AYAがん患者団体有志

小児とAYA世代のがん患者の妊孕性温存への支援を求める要望書

 がん医療の進歩に伴い、がん患者の治癒や生存期間の延長が期待できるようになってきましたが、治療によっては妊娠するために必要な力である「妊孕性」(にんようせい)が失われてしまう場合もあり、がん患者が子どもをもつことを希望している場合には、治療で妊孕性が失われてしまうことによる身体的・精神的な苦痛は大きなものがあります。特に、小児とAYA世代(思春期・若年成人)のがん患者は人生の成長期にあたり、精神的・社会的な基盤も十分に確立されていない時期にがん罹患と治療を経験することに加えて、妊孕性も失われてしまうことは精神的・社会的に大きな苦痛を伴うことになります。

 日本癌治療学会「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン」では、「がんサバイバーのquality of life(QOL)向上を志向して、妊孕性消失が予想されるがん領域における小児、思春期・若年がん患者に対する妊孕性温存に関する重要性を再認識する必要がある」としたうえで、男性については「化学療法前には精子凍結保存が推奨される」「勃起射精障害が起こる可能性が高い手術の場合には、神経温存手術が推奨される」、女性については「パートナーがいる場合、胚(受精卵)凍結保存が推奨される」「パートナーがいない場合、未受精卵子凍結保存が考慮される」「パートナーの有無にかかわらず、卵巣組織凍結保存は研究段階であるものの、胚(受精卵)または未受精卵子凍結保存までの時間的猶予がない場合や思春期前など排卵誘発が困難な場合、施行可能な施設において考慮される」などとされています。

 しかし、妊孕性を温存するための生殖医療は現在保険適用となっておらず、全額自己負担となっているため、子どもをもつことを希望しているがん患者はがん治療に伴う経済的負担のみならず、生殖医療を受けるために大きな経済的負担を強いられる状況になっています。一方、生命にかかわる疾病を抱えての妊孕性温存には慎重な意思決定が必要となります。その際に、がん治療を行う医師と生殖医療を行う医師との医療連携が不足していたり、患者に対する情報提供が不足していたりすることで、温存可能であった妊孕性が温存されない場合や、患者が生殖医療を受けられたとしても、生殖医療の限界により妊娠に至らなかったり、生殖医療を受けられなかった、あるいは生殖医療を受けても児を得るに至らなかった患者への精神心理的な支援が十分に受けられない場合があることから、特に小児とAYA世代のがん患者とその家族は大きな負担を強いられています。

 自治体によっては、このような状況にあるがん患者に対して、すでに公費による助成制度が行われていますが、支援が行われていない自治体との格差が拡がっている状況にあります。以上の状況に鑑み、がん患者、特に小児とAYA世代のがん患者が子どもをもつことを希望する場合の選択肢を増やすため、以下の要望をいたします。


小児とAYA世代の妊孕性温存治療に要する費用の保険適応や助成制度の創設など、経済的支援を行うこと。
妊孕性の温存に関する適切な生殖医療が行われるよう、医療機関、並びに、医療機関同士でのネットワーク体制を整備すること。
妊孕性の温存に関する情報提供、相談支援(意思決定支援)、精神心理的な支援が適切に行われるよう、対策を講ずること。
以上