一般社団法人全国がん患者団体連合会では2017年5月18日付で、「自由民主党での受動喫煙防止対策の議論に関する全国がん患者団体連合会の見解」を公開いたします。

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自由民主党での受動喫煙防止対策の議論に関する全国がん患者団体連合会の見解

一般社団法人全国がん患者団体連合会は、「がん医療の向上」と「がんになっても安心して暮らせる社会が構築されること」を目指し、全国のがん患者団体並びに多くのがん患者やその家族からの声をもとに活動を行ってまいりました。国の次期「がん対策推進基本計画」をはじめとするがん対策において、がんの罹患者数や死亡者数が減少するための政策が実施されることが必要であり、私たちがん患者やその家族が経験した痛みや苦しみ、悲しみを、新たに経験する国民が増えないようにすることが、私たちの願いです。

2016年の国立がん研究センターの推計では、国内で受動喫煙が原因で年間約1万5千人が亡くなっており、内訳は肺がんで2,484人、虚血性心疾患で4,459人、脳卒中で8,014人、乳幼児突然死症候群で73人の尊い命が失われている、とされています。現在策定されている国の第3期がん対策推進基本計画(素案)においても、「生活習慣の中でも、喫煙は肺がんをはじめとする種々のがんのリスク因子となっていることが知られており、また、がんに最も大きく寄与する因子であるため、たばこ対策はがん予防の観点から重要である」とされています。

現在政府で検討されている、受動喫煙防止対策を強化するための「健康増進法改正法案」に対して、全国がん患者団体連合会では、がんの罹患者数を減らし、国のがん対策を確実に推進するために、飲食店を含む不特定多数の人が集まる場所での受動喫煙をなくし、「建物内禁煙を基本とした実効性のある法的措置を講じること」を求め、かねてより要望活動を行ってきたところ、2017年5月15日に開催された自由民主党厚生労働部会においても、国会議員の先生方より、受動喫煙防止対策の更なる推進を支持するご発言をいただきました。

しかし、同部会において「飲食店を一括りとして扱って、表示義務だけで、望まない受動喫煙が防止できる、とは思えません。その考え方が強者からの考え方であって、全国がん患者団体連合会の直接の思いを話してきてくれ、ということで発言しております。がん患者の方々の就労支援は、大きな問題です。がんでも、一生懸命働いて就労している患者はいっぱいいる。そんな中、がん患者は選べません、お店を、仕事場を。弱い立場の方々がたくさんいる、ということを知ってほしいんです」と発言し、受動喫煙防止対策の推進を求めた三原じゅん子・参議院議員に対して、「(がん患者は)働かなくていい」との発言があったとのニュースが、5月17日にYahooニュース(駒崎弘樹・認定NPO法人フローレンス代表理事による)において掲載されました。

政府では2012年6月に策定された第2期がん対策推進基本計画に基づき、働くことを希望するがん患者が働けるよう、がんの治療と職業生活の両立を支援するための取組を実施してきたところであり、2017年3月に働き方改革実現会議によって策定された働き方改革実行計画においても、病気の治療と仕事の両立支援を含め積極的に取り組むことを強力に推進する、とされています。「がん患者は働かなくていい」とする国会議員の発言は、これらの取り組みを否定し、働くことを希望するがん患者の生活や希望を否定するものとなりかねません。

がん対策基本法では、がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指す、とされています。上記の発言は、がん患者の就労のみならずその尊厳を否定しかねないものであること、受動喫煙防止対策の推進を阻害しかねないものであると考え、全国がん患者団体連合会はここに抗議を表明するとともに、働くことを希望するがん患者に対する就労支援の推進と、建物内禁煙を基本とした実効性のある法的措置を講じることを、改めて強く要望いたします。

2017年5月18日
一般社団法人全国がん患者団体連合会