全国がん患者団体連合会では平成30年1月24日付で、日本癌学会(中釜斉理事長)、日本癌治療学会(北川雄光理事長)、日本臨床腫瘍学会(南博信理事長)と連名にて、「受動喫煙防止対策を強化する健康増進法改正案に関する要望書」を加藤勝信厚生労働大臣などに送付・提出すると共に、同日厚生労働省にて記者会見をいたしましたので、ここにご報告いたします。

「受動喫煙防止対策を強化する健康増進法改正案に関する要望書」記者会見(厚生労働省)

icon_pdf_03「受動喫煙防止対策を強化する健康増進法改正案に関する要望書」(PDF)

平成30年1月24日

厚生労働大臣 加藤勝信 様
国会議員の皆様

全国がん患者団体連合会理事長 天野慎介
日本癌学会理事長 中釜斉
日本癌治療学会理事長 北川雄光
日本臨床腫瘍学会理事長 南博信

受動喫煙防止対策を強化する健康増進法改正案に関する要望書

がんの患者団体並びにがんの関連学会では、がんの罹患者数を減らし、国のがん対策を確実に推進するために、受動喫煙防止対策を強化し、屋内禁煙を基本とした実効性のある法的措置を講じることを、繰り返し要望してまいりました。厚生労働省では健康増進法改正案に関して、当初案では医療機関や小中高校は敷地内禁煙、大学や官公庁は屋内禁煙とし、飲食店などに関しては店舗面積30平方メートル以下の小規模な飲食店を規制対象の例外として屋内禁煙とする案としていましたが、昨年11月には規制対象の例外となる店舗面積を150平方メートル以下とする案を検討しているとの報道がありました。

東京都が昨年、都内のおよそ2万店の一般飲食店、バーやスナックなどの遊興飲食店を対象に店舗面積を調査した結果では、店舗面積30平方メートル以下の飲食店の割合は、一般飲食店で31.3%、遊興飲食店で46.2%であったの対し、店舗面積が150平方メートル以下の飲食店の割合は、一般飲食店で92.3%、遊興飲食店で95.3%とされています。規制対象の例外を、当初案の店舗面積30平方メートル以下から150平方メートル以下とした場合、都内では9割以上の飲食店で喫煙が可能となり、他の都道府県でも同様となることが予想されます。世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)では、「たばこのないオリンピック」を共同で推進するとしており、東京五輪・パラリンピックにおいても「受動喫煙のない社会を目指す」としてきたところ、規制対象の例外となる店舗面積を150平方メートル以下とした場合、受動喫煙に多く人々が晒されている日本の現状を追認する、大幅な後退案であると言わざるを得ません。

昨年10月に閣議決定された国の第3期「がん対策推進基本計画」では、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約や海外のたばこ対策の状況を踏まえつつ、関係省庁が連携して、必要な対策を講ずる」「受動喫煙の防止については、オリパラ基本方針も踏まえ、受動喫煙防止対策を徹底する」とされています。また、 日本も締結する「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」(WHO Framework Convention on Tobacco Control : FCTC)では第8条にて、「締約国は、たばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されていることを認識する」「締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所及び適当な場合には他の公共の場所におけるたばこの煙にさらされることからの保護を定める効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を国内法によって決定された既存の国の権限の範囲内で採択し及び実施し、並びに権限のある他の当局による当該措置の採択及び実施を積極的に促進する」とされており、がん対策の推進や国際条約であるFCTC の趣旨にも反していると言わざるを得ません。

喫煙はがんや呼吸器疾患、循環器疾患、糖尿病、歯科疾患など様々な疾病や健康障害の原因となっており、 受動喫煙は、肺がんや呼吸器疾患、虚血性心疾患、乳幼児突然死症候群などの発症リスクを高めていることが明らかとなっています。厚生労働省研究班の推計では、日本において、受動喫煙が原因で年間約15,000人が亡くなっているとされており、喫煙により年間約1兆1,700億円、受動喫煙により約3,200億円の医療費が生じているとされています。受動喫煙は「健康被害」の問題であるという科学的事実に基づき、実効性のある法的措置を講じることを改めて強く要望いたします。